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南極料理人 映画『南極料理人』でおなじみの南極料理人、西村 淳さんによるおもしろくて、ためになる冷凍コラムをお届けするよ。

家族は遥か 15,000Km 1

【出港】

毎年11月14日、南極観測船「しらせ」は晴海埠頭から南極に向け出港する。

2週間ほどかけて南下し、赤道を越えインド洋を越えて、西オーストラリアの港町「フリーマントル」に到着する。

ここで玉葱・キャベツ・ポテト・オレンジなどの生鮮食品を購入し 南極行となるのだが、この停泊中は実に貴重な数日間で、文字通り「文明圏」での生活は1年間ほど不可能になるわけで、寝食を惜しんで遊び回ることになる。

そして12月の始めにいよいよ出港となり、港に停泊している船達が汽笛を鳴らして見送ってくれるのだが、ここで観測隊諸氏は、出港してから毎晩続く支援の海上自衛官達との大宴会、赤道祭、降るような星空、晩秋の日本から一気に真夏への転換を味わったお得感等々の楽しい思い出がリセットされ、海のむこうで待っているであろう未知の大陸への存在感が己の心で一気に増幅され、緊張感がにわかに押し寄せてくる。

現在は日本からオーストラリアまでの行程は、海上自衛隊のみが向かい、南極観測隊は成田からパースまで飛行機で空路となっており、おまけに「しらせ」はご時世からかドライシップ(アルコール禁止)となっており、味気ないと言えばそれまでだが、「自分たちの払った税金で酒なんぞくらいやがって」等とおっかない顔をして怒鳴り散らす人達が増えてきたからなあ・・・それでもねえ・・・。

揺れまくる暴風雨圏を通過し、

最初の氷山が見えてくる頃には、隊員達は南極モードに気持ちが徐々に変わりだし、すっかり遠くなってしまった日本のことは正直現実問題としてとらえにくくなってくる。

【最初の氷山】

「南極料理人」って? どんなひと? どんな仕事?開閉ボタン

西村淳(にしむらじゅん)著書『面白南極料理人』

西村淳(にしむらじゅん)
1952年、北海道生まれ。作家兼料理人。

海上保安学校を卒業し、巡視船勤務の海上保安官となる。そして二度の「南極観測隊」に参加。

一度目は「昭和基地」、二度目は「ドームふじ基地」で越冬する。隊員たちの食事まわりすべてのことを担当する「調理隊員」という肩書きの一方で、通信・雪上車、車両メンテナンス・観測気球打ち上げのサポート、氷サンプリングのサポート、チェーンソーマン、大工、ボイラーメンテナンス、野外観測旅行のナビゲーター、雪穴堀り、燃料輸送・・・など、氷点下の世界でさまざまな仕事をこなす。

巡視船の教官兼主任主計士として海猿のタマゴたちを教えたあと、2009年に退職。同年、自身のエッセーが『南極料理人』として映画化された。主演は、堺雅人。現在は、講演会、料理講習会、テレビ、ラジオ、執筆などで活躍中。著書に『面白南極料理人』『いい加減は良い加減 -南極料理人のレシピ&ひとりごと-』などがある。

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