東京のFM局に出演したときのお話し。
若い女性リポーターと出演前の打ち合わせとなったとき、彼女からこんな言葉が流れてきた。
「西村さんは南極大陸に30次と38次隊で。越冬隊として参加したのですね。南極のことはリスナー様達には寒いところだとしか認識されていないと思います(そうでしょうねえ)西村さんが書かれた面白南極料理人を拝見していたく感銘を受けました(ありがとうございます)南極に行ったとき食材なども色々工夫して持って行かれたと思うのですが(そうそう)今回はですね、その南極大陸でどのように無駄なく食材を使っていったのか(了解です)獲物をですね(?)ペンギンやアザラシや(??)白クマを(????)仕留めて、それをどのように無駄なく使っていったのかぜひとも皆様に紹介してもらいたいと・・・」絶対こいつは我が本を読んでもいなければ、リサーチもしていないと確信した。
あやうく切れそうになったが、その前に同行した女性編集者が切れた。
「南極に白クマはいませんから・・・」
空間に微妙な空気が流れ、「トイレのふりをして逃げちゃおうかなあ」なんて不埒な考えも浮かんだが、その状況を打破したのが場をぶち壊しそうになったリポーター女史本人だった。
「南極料理人」って? どんなひと? どんな仕事?開閉ボタン
西村淳(にしむらじゅん)
1952年、北海道生まれ。作家兼料理人。
海上保安学校を卒業し、巡視船勤務の海上保安官となる。そして二度の「南極観測隊」に参加。
一度目は「昭和基地」、二度目は「ドームふじ基地」で越冬する。隊員たちの食事まわりすべてのことを担当する「調理隊員」という肩書きの一方で、通信・雪上車、車両メンテナンス・観測気球打ち上げのサポート、氷サンプリングのサポート、チェーンソーマン、大工、ボイラーメンテナンス、野外観測旅行のナビゲーター、雪穴堀り、燃料輸送・・・など、氷点下の世界でさまざまな仕事をこなす。
巡視船の教官兼主任主計士として海猿のタマゴたちを教えたあと、2009年に退職。同年、自身のエッセーが『南極料理人』として映画化された。主演は、堺雅人。現在は、講演会、料理講習会、テレビ、ラジオ、執筆などで活躍中。著書に『面白南極料理人』『いい加減は良い加減 -南極料理人のレシピ&ひとりごと-』などがある。
南極はどうよ?
キューピー冷凍卵
「あの~私食べ物にほとんど興味無いんです。食べられるものはパン・卵・ソーセージで、後はほとんど食べられないんですよねえ」倒れそうになった。
これまで何回かテレビ・ラジオに出演したが、少なくとも進行係が食べ物に興味が無いなどと言った状況はただの一度も無かった。
若干とまどうと同時に、興味も沸いてきて3種類の食材で生きてきたのならさぞかし色々な調理法でと思ったのだが、そのことを質問したら彼女はきっぱりと「パンはバターをつけないトースト、ウインナソーセージはボイル、卵はゆで卵のみ・・・以上!!」キッパリとこんな答えが返ってきた。
「こいつを南極に連れて行ったら、食材は3種類で良いから楽だったよなあ」こんな事を考えつつ、ある意味感心しながら本番に望んだが、「ほとんど食べ物・食材・食事風景が出てこない、南極食話」と言った、それだけで本が書けそうな状況で30分の収録を終えた。食の話しはただ一つ。
「卵はどうしたんですか?」
「キューピーの冷凍卵を持っていきます」
「冷凍卵なんてあるんですか?」
「あるんです」
「殻がついているんですか?」
「牛乳パックの様な物に入っています」
「どうして?」
「???????????」
「あっ私マヨネーズも食べられます」
「それはそれは・・・サラダにつけるのですか?」
「だからわたし野菜は食べられないのです。そのままなめます」
「はい~?(尻上がりのアクセント)」
「あっ!!御飯にかけたら少しは米が食べられるかなあ」
だんだん気持ち悪くなってきた。
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