帰国してジャガイモ王国北海道でBBQを挙行した際もよく使用させてもらったが、「これ美味しい!やっぱり本場は違うねえ」の声が圧倒的で、「アホ!アメリカ産だワ」等とはもちろん言わず、ニンマリとアルカイックスマイルを浮かべただけで、その場を濁していたが、それにしても本当に美味しかった。
クォーターカット・ハーフカットと明記された冷凍ポテトもみそ汁・煮物などに大活躍してくれること間違いなしと予想できるほどの完成度で、玉葱類もパールオニオン・スライスオニオン・みじん切りなどの品種がズラリと揃えられ、 ソースのベースに欠かせない「オニオンアッセ(炒めたあめ色玉葱)」も、冷凍スライスオニオンを使うと、一個につきおよそ5分で出来てしまうことがわかったのも大きな収穫だった。
ニンニクの芽は、炒め物などの定番料理を作ってみたが、皮がフレッシュの物より、スルリと簡単にむけることがわかり、心に何かが閃いた。このときはよくわからなかったが、ドーム基地に向かう雪上車の中で、それが何だったか判明した。答えは歯触りの良さ=生でもいいじゃん!でございました。
当たり前だが、南極大陸にスーパーマーケットは無い。果てしなく続く真っ白な雪原をトコトコ雪上車で走っていくのだがそんな補給不可能な環境でも、隊員諸氏の食への願望はとどまることを知らない。
【日常の風景】
「コリコリポリポリした野菜が食べた~い」これがある日のリクエストだった。砂漠の真ん中で「もぎたてのフルーツアラカルトが食べたい。それもキリリと冷えた奴」位に匹敵する、言語道断・実現不可能のリクエストである。「あほ!馬鹿!非国民!アンポンタン!そんな物あるわけねえだろ。死ね!とはもちろん言わないけれど、反省しなさい」とはもちろん言わず、数秒間必死で考え、そして想い出したのがこの冷凍野菜だった。
ニンニクの芽は中ほどをつまみ、皮を静かに引っ張るとスルリとむける。それをタンタンと切って、かつおぶしをたっぷりかけると「冷凍にんにくの芽のおひたし」の完成である。醤油をタラリと落とし、おもむろに口に入れると甘さと香りがフワリと広がり、隊員諸氏には大好評の一品であった。
【進めドーム基地へ】
一通り試作・試食を行い、大事な野菜がリストに無いことに気がついた。「キュウリの冷凍は無いのですか?」場にしらけた雰囲気が流れた。メーカーの方が「キュウリの冷凍は需要が無いと思われるので、リストにはありません」やさしくそしてきっぱりと言い放った。
いくらきっぱりと言われても、南極にはもちろんキュウリ畑は無いので、すっぱりあきらめるか、サラダも漬け物類でごまかそうかなあと思った時に、こんな答えが返ってきた。「きゅうりの冷凍作ってみましょう」
数々の試行錯誤を繰り返し、最終的には生で食べるには「塩気のない失敗したキュウリ一本漬け」みたいになってしまったが、凍ったまま輪切りにしてサラダに入れたり、酢物にしたら塩もみした形状にかなり近い物が出現した。
これは現在派遣されている、「南極観測隊」も使用しているが、先日何気なく冷凍キュウリとGoogleで拾ってみると、あるわあるわ山ほど「冷凍キュウリは私が作りましたーーー」と主張?している項があり、誰が一番か等とは言わないけれど、「商標登録でもしときゃ良かったかなあ」等と少しイジイジしている。
【冷凍キュウリの酢豚風】