登っていくと言ったが、ドーム基地は標高が3,800mあり、富士山より4m高い場所に位置している。
気温は平均―57℃
最低気温は―70℃
空気は地表より2割少なく、お湯は85℃で沸騰する。
どれだけ寒いかと言えば、バナナで釘を打つとか、広げた手ぬぐいが瞬時に板状になるなんてのは当たり前で、マグカップにいれたお湯を空間にぶちまけると、瞬時に凍結して煙状態と言うか、花火のようにパーッと散る。
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お湯花火 提供国立極地研究所
全部冷凍!
ここで9名の隊員諸氏と1年余りの越冬を行ってきた。
食料は100%冷凍・乾燥・缶詰で、「さぞかしつらく、厳しく、悲惨な食糧事情だったのだなあ」と思われるかもしれない。
錯覚である。
日本のメーカー様達が開発している、冷凍食品の数々は想像を遙かに超えたレベルまで到達しており、日本国内の食生活よりある意味豪華絢爛な毎日だったと断言してもそうはずれてはいない。
そして消毒・下ごしらえ・パッキングされた製品の数々は、ゴミが発生することもなく、ある意味本当のエコロジーだと断言しても良いだろう。
そんな食材や料理の数々をこれから紹介していくのであるが、回が進むと「明日から我が家の食材は全部冷凍にしてやろう」なんて考えるかもしれない・・・と前置きが長くなったが、いよいよ始めましょう。
「南極クッキングワンダーワールド」の開演であります。
次回予告
残念ながら今回はここまで。
次回はいよいよ冷凍食品をつかったオリジナルレシピのおはなしだよ。
冷凍食品が南極ではあんなメニューに大活躍!?
お楽しみにね!
「南極料理人」って? どんなひと? どんな仕事?開閉ボタン
西村淳(にしむらじゅん)
1952年、北海道生まれ。作家兼料理人。
海上保安学校を卒業し、巡視船勤務の海上保安官となる。そして二度の「南極観測隊」に参加。
一度目は「昭和基地」、二度目は「ドームふじ基地」で越冬する。隊員たちの食事まわりすべてのことを担当する「調理隊員」という肩書きの一方で、通信・雪上車、車両メンテナンス・観測気球打ち上げのサポート、氷サンプリングのサポート、チェーンソーマン、大工、ボイラーメンテナンス、野外観測旅行のナビゲーター、雪穴堀り、燃料輸送・・・など、氷点下の世界でさまざまな仕事をこなす。
巡視船の教官兼主任主計士として海猿のタマゴたちを教えたあと、2009年に退職。同年、自身のエッセーが『南極料理人』として映画化された。主演は、堺雅人。現在は、講演会、料理講習会、テレビ、ラジオ、執筆などで活躍中。著書に『面白南極料理人』『いい加減は良い加減 -南極料理人のレシピ&ひとりごと-』などがある。
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