「冷凍野菜って栄養がちゃんと残っているの?」と気になる方は多いですよね。実は、冷凍野菜は生野菜とほとんど変わらないどころか、季節によっては生より栄養価が高いこともあります。冷凍の仕組みや保存方法の工夫によって、おいしさも栄養もキープできるんです。
今回は、その理由と栄養をムダにしない調理のコツをわかりやすく解説します。
冷凍野菜の栄養は生野菜とほとんど変わらない!

冷凍野菜は栄養が少なくなっているイメージがあるかもしれませんが、実は生野菜とほとんど変わらない栄養価を保っています。
例えば、ほうれん草は12か月後のビタミンC残存率が94%もあり、にんじんは77%、西洋かぼちゃは87%も残っています。
季節によっては生鮮品よりも栄養価が高い場合もあるほどです。旬の時期である12月に収穫して冷凍したほうれん草のほうが、4月、5月、6月に収穫した生鮮ほうれん草よりもビタミンC含有量が高く、6月ではその差が大きくなっているという研究結果があります。
生鮮品は収穫してから時間が経つほど栄養価が下がることがわかっています。
▼生鮮品と冷凍野菜の栄養価の違いについて詳しくはこちら
冷凍野菜の栄養が維持される理由
冷凍野菜の栄養を長期間保てる理由を詳しく見ていきましょう。
理由1|「ブランチング」により酵素を不活性化、変質や変色を防いでいるため
冷凍食品の野菜類の多くは、ブランチングという処理を施されています。
ブランチングとは、野菜を90℃から100℃の熱湯に漬けたり蒸気にあてたりして、通常の調理加熱の70%から80%程度まで固めに加熱することをいいます。
ブランチングすることで、野菜に含まれる酵素の働きが止まるため、変質や変色を防ぎ、味や食感を保つことができるんです。
理由2|「急速凍結」で組織の破壊を防ぐため
冷凍食品工場では、-30℃~-40℃程度のとても低い温度帯で一気に凍結するので、食品の細胞を壊すことなく冷凍しています。そのため、味や食感、栄養価も保つことができるのです。
→急速凍結について詳しくはこちら
理由3|-18℃以下の保存で栄養の損失を防ぐため
冷凍野菜は、少しでも新鮮さを維持するために、収穫した後すぐに加工されてスピーディーに冷凍処理が行われます。そして、お店の冷凍食品コーナーに並べられるまで、ずっと-18℃以下の温度で管理されているんです。
この温度管理がどれほど重要かを示す実験結果があります。
生鮮のほうれん草を収穫後4.5℃で保存すると、3日後にはビタミンC含有量が78%に減少し、25℃で保存した場合はわずか3日で56%まで減少してしまいます。
一方、-18℃で保存した冷凍ほうれん草の場合、含有量が50%に減少するのはなんと33か月(2年9か月)後!保存する温度帯でこんなに差が出るんですね。
下のグラフは、12月に収穫した国産のほうれん草を冷凍した物と、各月の生鮮ほうれん草のビタミンCの含有量を比較したグラフです。冷凍野菜は、旬の時期に収穫して急速凍結しているので、しっかり栄養が保たれます。時期によっては生鮮のものより栄養価が高い場合も。また、概ね1年程度は栄養価が落ちず、品質が保たれています。
▼生鮮および冷凍ほうれん草のビタミンC含有量

また、グリーンピースを使った実験では、-1℃で保存すると20日後にはビタミンCのほとんどが消失し、-12℃では1年後に約4分の1程度にまで減少しましたが、-18℃の場合はごくわずかしか減少していないことがわかっています。
▼グリーンピースのビタミンCの保持に及ぼす保存温度

この温度を一定に保つことで野菜の劣化を防ぎ、栄養を維持することができるのです。
冷凍野菜をおいしく調理するポイント

冷凍野菜の栄養を逃さず、おいしく食べるためには、ちょっとしたコツがあります。ここでは、冷凍野菜を調理する際のポイントを3つご紹介します。
解凍せずに調理する
冷凍野菜を調理するときは、解凍せずに凍ったまま使うのがおすすめです。
じっくり自然解凍してしまうと、野菜の繊維が破壊されやすく、水分と一緒に栄養素が流れ出てしまう可能性があります。そのため、ベチャッとした食感になってしまうことも。
凍ったままの状態で、しっかり熱したフライパンや沸騰したお湯に入れて調理すれば、栄養も食感もキープできます。解凍の手間もなくすことができるので、時短にもなって一石二鳥ですね。
加熱しすぎない
冷凍野菜は加熱しすぎると、ビタミンCなどの水溶性ビタミンが失われやすくなります。
冷凍野菜はあらかじめブランチング処理がされているため、生野菜よりも火が通りやすい状態です。加熱は生の野菜の2~3割の時間で十分です。 パッケージに書かれている表示時間を守り、必要以上の加熱は避けるようにしましょう。
茹でるよりも蒸す
冷凍野菜を調理する際は、茹でるよりも蒸すほうがおすすめです。
茹でると、水に溶けやすい栄養素が流れ出てしまいますが、蒸すことで栄養素の損失を防ぐことができます。
なお、冷凍野菜の調理方法については、以下のリンクもご覧ください。野菜の種類別に調理方法を解説しています。
冷凍野菜の栄養をしっかり摂れるレシピ

冷凍野菜を使えば、栄養バランスの良い食事が簡単に作れます。ここでは、1人暮らしの方にもおすすめの、野菜たっぷりで栄養満点のレシピを3つご紹介します。
野菜たっぷりのミネストローネ
冷凍野菜を活用した野菜たっぷりの「ミネストローネ」は、たくさんの野菜を無理なく摂れるスープです。
材料(5~6人分)
- 鶏もも肉200~250g
- 冷凍ミックスベジタブル(グリーンピース、コーン、にんじん)150g
- 冷凍かぼちゃ200g
- 玉ねぎ1個
- セロリ1/4本
- にんにく1かけ
- ローリエ1枚
- しめじ1/2パック
- オリーブオイル大さじ2
- ホールトマト1缶
- だし汁200cc
- ナツメグ少々
- 白こしょう少々
- 塩小さじ1.5
- 水600cc
- パルメザンチーズお好みで
作り方
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鶏もも肉の皮を取り、2cm角に切って軽く塩(分量外)をふって揉みます。玉ねぎは粗みじん切り、セロリは輪切り、にんにくはみじん切りにします。
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鍋にオリーブオイルとにんにくを入れて弱めの中火にかけ、香りが立ったら強めの中火にして玉ねぎを加えて炒めます。玉ねぎがしんなりしたら、鶏肉を加えて色が変わるまで炒めます。
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冷凍ミックスベジタブルとしめじ、セロリを加えて炒めます。
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果肉をつぶしたホールトマトと水、冷凍かぼちゃ、ローリエを加えて、フタをしないで火にかけます。沸騰したら火を弱めて15分ほど煮込みます。
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だし汁、ナツメグ、白こしょう、塩を加えて味を整えたら完成です。器に盛り付け、パルメザンチーズをかけてお召し上がりください。
ほうれん草豆腐バナナスムージー
食欲がないときの栄養補給にぴったりな「ほうれん草豆腐バナナスムージー」です。野菜とたんぱく質を手軽に摂取できます。
材料(1人分)
- バナナ1本
- 冷凍ほうれん草30g
- 水100cc
- 絹ごし豆腐50g
作り方
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冷凍ほうれん草を袋の表示通りに電子レンジで解凍し、軽く水けを絞って小さく切ります。
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バナナは皮をむいて、厚さ1cmの輪切りにします。
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ミキサーにほうれん草、バナナ、豆腐、水を入れて、なめらかになるまで撹拌したら完成です。
グリルチキンスープカレー
低脂肪高たんぱく質の「グリルチキンスープカレー」は、健康的な食事を心がけたい方にぴったりです。
材料(2人分)
- 冷凍グリルチキン10切
- 冷凍かぼちゃ60g
- 冷凍ブロッコリー40g
- 玉ねぎ(みじん切り)100g
- にんじん(乱切り)160g
- コンソメ1個
- カレー粉小さじ2
- トマト180g
- 水600cc
- ゆで卵1個
作り方
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鍋に玉ねぎとにんじん、少量の水を入れて中火で炒めます。
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玉ねぎがしんなりしてきたらカレー粉を加えて炒め、水とコンソメを加えて煮立てます。
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トマトを食べやすく切って加え、再び煮立ったら、冷凍グリルチキン、冷凍かぼちゃ、冷凍ブロッコリーを凍ったまま加えて、ひと煮します。
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器に盛り付けて、ゆで卵を添えたら完成です。
まとめ
冷凍野菜は、生野菜にも劣らない栄養をしっかり保てる優秀な食材です。調理のポイントを押さえれば、手軽でおいしく栄養満点の料理が作れます。毎日の食事に冷凍野菜を上手に取り入れて、無理なく健康的な食生活を続けていきましょう。
この記事を書いた人
日本冷凍食品協会 編集チーム
冷凍食品の魅力を伝える普及活動をしています。