
冷凍食品は下処理が行われているものや調理が済んでいるものがあり、家庭で簡単な調理や温めるなどして手軽に食べることができます。最近では、タイパが良いということもあって、ますます家庭での食事やお弁当に欠かせない存在になってきています。しかし、安全性についてはどうなんでしょうか。
そこで今回は、冷凍食品とはどのような食品なのか、日本の食品衛生法や国際規格、安全な冷凍食品であることを示す日本冷凍食品協会の認定マークなどについて解説します。
冷凍食品って何?協会が定める冷凍食品の定義や法令を踏まえて紹介

多くの皆さんは、食品を凍結したものを冷凍食品と思っているのではないでしょうか。実は、食品を凍結しただけでは冷凍食品と言えません。その理由を、順を追って解説していきます。
まず、日本冷凍食品協会(以下、協会)では、冷凍食品の定義として次の4つの条件を定めています。
【1.前処理している】
品質、安全性、加工性、保存性を高めるためなどに行う工程を前処理といいます。魚・肉・野菜などで前処理を行っていないものは、冷凍食品とはみなせません。
【冷凍食品の前処理工程の例】
工程 | 内容 | 目的 |
---|---|---|
① 原料選別 | 異物・不良品の除去 | 品質と安全性の確保 |
② 洗浄 | 土壌・微生物・薬剤の除去 | 衛生管理と微生物リスク低減 |
③ 切断・整形 | サイズ調整、形状加工 | 加工効率と均一性の向上 |
④ 加熱処理 | ブランチング、蒸し、焼成など | 酵素失活、微生物制御、食感調整 |
⑤ 調味・衣付け | 味付け、パン粉付けなど | 製品特性の付与 |
≪解説≫
前処理は、食品の種類(野菜、魚介、肉、調理品など)や最終用途(業務用、家庭用、レンジ調理など)によって大きく異なります。
また、前処理段階での微生物汚染や異物混入が重要なリスクになることが多く、これらをできるだけ排除するために、HACCPで管理することが必要です。
【2.急速凍結している】
凍結する際に、食品の組織が損なわれて品質が劣化しないように、非常に低い温度で急速凍結を行うことが必要です。
≪解説≫
急速凍結とは、「最大氷結晶生成温度帯」という温度帯(一般的に-1℃~-5℃)を、おおよそ30分以内に通過させることを条件としています。仮に、通過時間が長くかかると、食品の内部に大きな氷ができ、食品の組織が破壊され風味や食感が損なわれます。
そのため、協会では、急速凍結が食品の食感、風味及び栄養価が落ちるのを防ぐため、これを条件としています。
【3.適切に包装している】
衛生状態を保ち異物混入や形くずれしたりするのを防ぐために、包装しなければいけません。また、包装表面には、取扱方法、調理方法、使用上の注意や法律で決められている項目など、さまざまな情報を表示する必要があります。
≪解説≫
急速凍結した冷凍食品が、乾燥、外部からの汚染、形くずれなどを防ぐために、食品に合った適切な容器・包装で包装しています。
なお、包装の表面には、使用原材料、アレルゲン物質、賞味期限、栄養成分、調理方法など、法令で定められた情報(消費者にとって重要な内容)も表示しています。
【4.-18℃以下で保管している】
生産・貯蔵・輸送・配送・販売の各段階を通じて、冷凍食品が常に-18℃以下に保たれるよう、適切な温度管理を行っています。なお、工場では、製品を出荷するまで-18℃以下で保管し、以降の段階では、この温度が保たれるよう関連する事業者にお願いしています。
≪解説≫
日本の法律である食品衛生法では「-15℃以下で保管すること」が決められていますが、業界団体である協会では、国際的な規格に合わせて「-18℃以下」で保管することを条件としています。事実上、これが日本における冷凍食品の基本的な保管温度となっています。
この温度を保つことで、食品中の微生物の動きを抑制でき、腐敗や食中毒を防いでいます。また、長期間保存しても味や食感が落ちにくく、おいしさを保つために、この温度が非常に重要と考えています。
この「-18℃以下」で保管するという協会の定義は、1970年からずっと変わっておらず、それだけ、信頼できる温度だということです。
ちなみに、冷凍食品は微生物が増えないので、保存料を使わなくても安全に保管できます。言いかえると、「-18℃以下で保管すること自体が、保存料の代わりになっている」とも言えます。
次項以降では、冷凍食品にかかわる法令や国際規格などについても詳しく解説します。
国内における冷凍食品は食品衛生法上どう定義されている?

食品の安全性を確保するために定められた「食品衛生法」の施行規則では、冷凍食品の定義が以下のように示されています。
・冷凍食品とは?
「製造し、又は加工した食品及び切り身又はむき身にした鮮魚介類を凍結させたものであって、容器包装に入れられたもの」です。なお、保存温度は協会の条件とは異なり、
-15℃以下と定められています。
(注)一部の品目(例:清涼飲料水、食肉製品、生かき等)を除きます。また、冷凍食品は、用途や凍結前の加熱の有無によって分類され、それぞれに成分規格が定められていますので、事業者は、この成分規格を守った製品づくりをしなければなりません。
【冷凍食品の分類と成分規格一覧】
分類 | 主な例 | 成分規格(微生物基準) |
---|---|---|
① 無加熱摂取冷凍食品 (飲食の際に加熱が必要ないもの) | 冷凍ケーキ、冷凍ゼリー | 生菌数:10万以下/g 大腸菌群:陰性 |
② 加熱後摂取冷凍食品 (凍結直前に加熱したもの) | 冷凍から揚げ、冷凍ハンバーグ | 生菌数:10万以下/g 大腸菌群:陰性 |
③ 加熱後摂取冷凍食品 (凍結直前に加熱していないもの) | 冷凍ギョウザ、冷凍ピザ | 生菌数:300万以下/g E.coli:陰性 |
④ 生食用冷凍鮮魚介類 | 冷凍マグロ、冷凍サーモン寿司種 | 生菌数:10万以下/g 大腸菌群:陰性 腸炎ビブリオ:100以下/g |
≪解説≫
野菜、魚介類、肉類を加工せずそのまま凍結した製品(凍結品という)などは、法的に冷凍食品とはみなされません。冷凍食品は、何らかの前処理や加工調理が行われたものを凍結し、包装し、包装パッケージに「冷凍食品」と表示したものをいいます。
次に、凍結品と冷凍食品の違いを例として示します。
(例1)
凍結品 :水揚げしたサバを、そのままあるいは簡易な洗浄を行い凍結・包装したもので、冷凍食品と表示していないもの。なお、包装といっても密封していない簡易な場合が多い。
冷凍食品:水揚げしたサバの表面を洗浄し、清潔な器具を用いて切身にしたものを凍結し
包装したもので、冷凍食品である旨を表示したもの。
(例2)
凍結品 :収穫後トウモロコシの皮をとり、そのままあるいはカットした後に凍結・包装したもので、冷凍食品と表 示していないもの。
冷凍食品:収穫後トウモロコシの皮をとり、そのままあるいはカットした後にブランチング※したものを凍結し、包装したもので冷凍食品である旨を表示したもの。
※ブランチングとは、野菜に含まれる酵素を失活させるための加熱のこと。
(例3)
凍結品 :調理加工(中具を皮で包むなど)した生餃子(皮及び中具は、加熱していない)を凍結したもので、冷凍食品と表示していないもの。一般的なものは中具に含まれているミンチ肉が加熱されていないため、成分規格を満たせないものが多い。
冷凍食品:調理加工した餃子(皮及び中具を加熱している)を凍結し、包装したもので冷凍食品である旨を表示したもの。
冷凍食品に関連する国際規格は?

冷凍食品に関連する国際的な規格として、Codex(コーデックス)規格があるため、その概要を説明します。
【CXC 8-1976:急速冷凍食品の加工及び取扱いに関する国際的実施規範】
これは、冷凍食品に特化した衛生実施規範であり、国際貿易・製造・流通における品質と安全の基準として多くの国々で広く参照されています。
この規範にある「急速凍結されたものであること」と、「-18℃以下で保存すること」は、協会の定める条件と同じです。(食品衛生法とは異なります)
項目 | 内容 |
---|---|
対象 | 急速冷凍された穀類、青果物、魚介類、肉類、パン・ペストリーなど |
主な内容(範囲) | 原料の選定、前処理、凍結方法、包装、保管、輸送、流通、小売までを含めたコールドチェーン全体の衛生管理指針 |
保存温度 | -18℃以下(微生物の増殖抑制と品質保持のため) |
HACCPとの関係 | HACCPの導入を推奨 |
※除外品:食用氷、アイスクリーム、乳製品など
冷凍食品における認定マークとは?
冷凍食品の中で、認定マークが付いていることを知っていますか。
認定マークが付いている冷凍食品は、HACCPシステムでつくられた冷凍食品であることを示す、安全性や品質が高く信頼できる商品です。詳細はこちらの記事や協会の冷凍食品コンサルタントである冷凍王子こと西川氏が作成したYouTube動画もご覧ください。
まとめ
日本で販売されている冷凍食品は、食品衛生法の成分規格を満たす必要があります。また、冷凍食品は-18℃以下で保存しているため、保存料を使用する必要がなく、一般的なそうざいに比べると長期間保存できて安全性が高い食品といえるでしょう。
協会の認定工場は、冷凍食品認定制度を活用し、絶えず品質管理レベルを向上し、さらに安全で品質の高い製品を製造しています。
これから冷凍食品を購入するときは、ぜひ認定マークがついているかどうかをチェックしてみてください。

この記事を書いた人
日本冷凍食品協会広報部編集チーム
冷凍食品の魅力を伝える普及活動をしています。