冷凍の世界 ~冷凍食品の新常識~ 前編
日常でよく使う冷凍食品。毎日何気なく使っているけれど実は間違った使い方をしている!?もしかしたら冷凍食品自体に疑問を持っている方は少なくないのかも知れません。そもそも冷凍食品の正しい使い方ってなに?冷凍食品の正しい知識を知るためになぜそうなのか!を冷凍博士に教えてもらいましょう!
技術・科学的な側面からサポートしてくれる先生
鈴木徹(すずき とおる)
農学博士 東京海洋大学大学院 食品生産科学部門 教授。
水産物冷凍、解凍、食品冷凍に関して全般をカバーする研究。食品のガラス物性研究、過冷却や魚卵凍結保存研究、デンプン構造変換研究、フライ調理メカニズム研究など多くの研究を手がけている。現場と基礎をつなぐ研究を心がけている。
こんにちは。冷凍博士、鈴木徹です。
僕もよく食べる冷凍食品ですが、どんどん美味しい冷凍食品がでてきますよね。
実は冷凍食品の美味しさには様々な技術が詰まっているんです。その技術の基礎、「冷凍」そのものには科学がいっぱい詰まっているんです!
そんな「冷凍の世界」をお楽しみください!
こんにちは。冷凍コロッケです。
冷凍の世界を鈴木先生にズバズバっと聞いていくよ!
先生よろしくお願いします!!
コロッケくんこんにちは。
冷凍の世界を一緒にみていきましょう。
一問一答で答えていくよー!
じゃーさっそく!!最初に冷凍ブロッコリーちゃんの疑問点を質問するよー!先生、質問が鋭すぎて固まらないようにね!冷凍だけに。ぷぷぷ
・・・・・。
冷凍野菜は解凍してから使う!?
冷凍庫に一つあると便利な冷凍野菜。使い方ってみんな知ってる?
おいしく食べるためには解凍してから使った方がいい??ほんと?
よくある質問だね!冷凍野菜の解凍方法、気になるよね!
こたえは次に説明するよ!!
冷凍野菜は解凍してから使うの?開閉ボタン
正解は「冷凍野菜は凍ったまま調理」なんだよ!(※1)
上の写真のような冷凍野菜ってよく見るよね?
冷凍の野菜は、一番おいしい旬の時期のとれたてを冷凍しているんだけど、ほとんどの冷凍野菜は冷凍する前にブランチングといって、急速凍結する前に90~100°C位の熱湯に浸けたり蒸気にあてたりして調理加熱の70~80%程度加熱をしてあるんだ。
※1 自然解凍品を除く。
へぇー。旬の野菜がいつでも食べられる上に事前に下処理がされているのね!
料理の手間が省けるってことよね!
たしかに熱処理がしてあるので、時短にはなるんだけど、料理の下処理が目的じゃないんだよ。
ブランチングはね、殺菌に加えて野菜の持っている酵素の活動を抑えて冷凍中の変質や変色を防いだり、組織の破損を防ぐためにしているんだ。
酵素の活動??それってどういうこと?
酵素っていうのは食べ物の中にふくまれている物質なんだけど、簡単に言うと食べ物を酸化させたり、変色させたりする性質があるんだ。なので鮮度を保ちたい冷凍野菜にとっては天敵なんだよね。
なるほどー!
まだ研究段階なんだけど、ブランチングの条件によっては、どうしても2~3割の酵素が残存しちゃうようなんだ。なので調理する時は、この残存酵素を抑制するように、できるだけ早く加熱するのがポイントなんだよ。
そして、この酵素たちはたんぱく質の仲間なので、30℃~40℃台が一番元気に活動する性質があるんだ。
だからこの温度帯を早く通り抜ける必要があるんだ。つまりは冷凍された状態のままフライパンに入れて一気に加熱することで、酵素の活動を抑制できるから変色しにくく、おいしく食べられるんだよ!
冷凍野菜は一気に加熱することがポイントなんですね!
あらかじめブランチングされていて火が通っているから、さっと炒めればOKだよ!
あんまり長く炒めないのがコツだよ!
レンジは自動のあたためボタンでしょ?
凍ったお刺身は冷蔵庫で自然解凍でしょ?
先生!僕からも質問!
今度は解凍について教えてください!
これもよくある質問だねぇ。
冷凍食品は上手に解凍することが、おいしく食べるためのコツなんだ。それは何故なのか!答えはこちらだよ。
レンジは自動のあたためボタンでしょ?
凍ったお刺身は冷蔵庫で自然解凍でしょ?開閉ボタン
ご家庭で冷凍食品を食べて「おいしくない」、「うまく出来なかった」という声を耳にすることがあるんだけど、詳しく聞いてみると、「パッケージを読んでいない」というケースが少なくない。
確かに、パッケージをしっかり読まないで解凍するケースがあるかもですね。
商品によって適切な解凍方法が違うから、パッケージに失敗しないための方法が書いてあるというワケなんだよ。
それを読まないのは非常にもったいないよね。
電子レンジの入れ方もそう。パッケージそのままで入れてよいのか、パッケージから出してラップが必要なのか、中身を取り出して入れるのかなど様々な加熱のスタイルがあるんだよ。
また自動で温めるのはNGなんだ!電子レンジによって自動温めは高出力になって加熱し過ぎる場合があるからね。電子レンジ加熱出力や加熱時間が変わるので自動温めはやらないように!!
えー、ほんと!それは重要なお話ですね!!
電子レンジ以外でも解凍する機会はあるよね。
質問にもあったお刺身の解凍はどんな解凍方法が良いのか。
こういった冷たい温度で食べるものは「表面温度を絶対に上げないこと」これが最重要!
なので、答えは「氷水で解凍する」というのがベストなんだ。冷蔵庫内でゆっくり解凍するより氷水の方が1/3以下の時間で解凍できるんだよ!
氷水で解凍かぁー!それは目から衣だね!コロッケだけに~。
・・・・。
表面温度を上げない?なんでですか?
これは、「冷凍野菜は解凍してから使う!?」でもお話したけれど、冷凍野菜は中途半端な温度帯を通り越して、一気に加熱することが重要だったね!
この「一気に加熱する」というのが盲点になっているんだよね。
一気に加熱することが盲点になっている!?
そうなんだ、どうしても皆のアタマの中に「凍っている状態」→「解けた状態」→「加熱」といった図式のイメージがあるみたいなんだよね。
この話はあらためて詳しく話すけど、-18℃以下であれば微生物は活動できないんだ。
逆に言うと、常温に戻すとそれらが活動を開始しちゃうんだね。そして常温にさらしておくと微生物の働きが一気に加速して食品には良くないことになるんだ。
そうなんですね!常温になると微生物が活動しちゃうんですね!
先ほどの「冷凍食品のパッケージをよく読むのが重要」という話にも繋がるんだけど、冷凍食品のパッケージに記載されている加熱方法と加熱時間は、家庭用の冷凍庫で-18℃以下で保存された状態から一気に加熱しておいしく食べられる時間と加熱方法だったね。
これが、それをしないで、一度常温に戻してからパッケージの方法で加熱してしまうと、加熱し過ぎてしまうんだ。
なるほど!!そういう事だったんですね!
これが失敗しちゃう原因だったんだ!
先生、本当に分かりやすかったです。ありがとうございました!
【コラム】冷凍食品『表示』の秘密
冷凍食品は、急速冷凍を行なっていること、製造から販売まで品温を-18℃以下に保つことなど厳しい要件をクリアしたものだけが、「冷凍食品」と商品に記載することができます。
スーパーなどで、-10℃以下や-5℃以下などの温度で「冷凍コロッケ」として販売されているものがありますが、これは「冷凍食品」ではなく「そうざい半製品」などになります。
また、冷凍された状態でお店に届いた商品を、解凍して詰め直して販売するケースなどもあります。
例えば、シーフードミックスが冷凍食品としてお店に納品された後、お店がお鍋シーズンに合わせて「お鍋セット」として野菜なども混ぜお店でパッケージし直して販売しているケースなど。
このような商品は「加工品」や「惣菜品」などとして販売されています。
それでは、冷凍食品と加工品・惣菜品との違いはどこで見分けるのか。
冷凍食品として販売されている商品は、必ずパッケージのどこかに「冷凍食品」という記載があります。
また「そうざい半製品」のような「冷凍食品ではない冷凍品」は、冷凍食品より賞味期限が短くなっていたり、しっかりと加熱が必要なものなど冷凍食品と調理方法が異なるケースもありますので、商品パッケージをよくご確認ください。
「冷凍食品が腐った?色が変わった、氷がいっぱいついてるのは危険なサイン?」
など気になる疑問にまだまだ答えていきます。
後編に続く!
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(一社)日本冷凍食品協会による、冷凍食品情報サイト。アレンジや保存方法など、知っているとちょっと差がつくコツをプロが教えます。
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